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水晶発振器のオーバートーンについて 中川 伸

水晶振動子を使って発振させるのに基本波とオーバートーンがありますが、どちらが高性能でしょうか?先ずは水晶にはいろんなカット方法があり、オーディオ用としては、ATカットとSCカットのほぼ2種類で、温度特性が異なります。ATカットは常温で使われるのに対し、SCカットは恒温槽で約80度Cに温めて使います。いずれも厚み滑り振動モードとなります。さて基本波、3倍波、5倍波などすべて奇数になりますが、偶数だと電位差が出ないので発振できません。基本波で発振させるのが、最も易しくて簡単に安定動作をします。ここでの安定とは発振の質が優れているという意味では決してありません。

この厚み滑り振動モードを図にしました。これを見てビリヤードで直接に当てるのか、2クッションや4クッションで当てるのかにすごく似ていると思います。直接当てるのは簡単なので安定に当たりますが、2クッションはより高い技術が必要で4クッションはもっと高い技術が必要になります。オーバートーン発振も、より高い技術が必要ですが、一旦、安定動作をさせてしまえば、より高性能になります。当たり前ですね。

ビリヤードで多クッションは、ほんの少し角度がずれるともう当たらなくなるのと同様にオーバートーンもほんの少し周波数がずれるとゲインが急に下がります。これを技術的にはQを使って表し、高いと周波数の揺れ幅が狭くなって低位相ノイズにできます。例えば基本波に対して3倍のオーバートーンだとQが3の自乗で9倍に増え、もしも5倍オーバートーンならQは25倍に増えることになります。水晶屋さんにとってはこれ常識です。

でも高次になるほど技術的には難しくなります。そこで、NDKで開発した、超高性能発振器DuCULoN は3倍に留めています。昔は水晶発振器といえばハートレー、コルピッツ、クラップといった回路が使われましたが、今はインバーターICを使うのが主流です。この発振回路は図のようになります。

これを基に3倍オーバートーンにするには基本波で発振させない工夫が必要となります。それは3倍オーバートーンの周波数に合わせたLC並列共振回路の挿入です。回路は発振させたい周波数だけが正帰還になるようにして、それ以外の周波数はゲインを下げるようにする原理です。A側に入れてもB側に入れても良いことになっていますが、実際にやってみるとB側のほうが上手くいきます。ここでC2とC3の値を合計した1個のCに置き換え、部品点数を削減します。

増幅素子はバイポーラトランジスタの方がそもそもCMOSよりも低1/fノイズなので位相ノイズも少なくなります。CMOSのインバーターデバイスを使って低周波アンプを作ってみれば1/fノイズが多いことはすぐに分かります。当社のDACでCAPRICEに使っている発振器とDuCULoN の共通点は3倍オーバートーンで発振させ、初段にバイポーラトランジスタを使っていることです。2015年頃でしょうか?秋葉原の損保会館でオーディオイベントが開催され、そこにNDKが出展し、私はDuCULoN の設計者と細かい話を交えているので、このページの情報は確かです。初段がCMOSICを使った基本波の発振器よりもこだわった発振器なのでCAPRICEはクラスAのIVアンプと相まって純度の高い澄んだ音質が得られています。弦やソプラノの美しさには定評の有るところです。ちなみにCAPRICEは最初から32MHzを3倍オーバートーン発振させて96MHzのクロックなので11.2MHzのDSDや384kHzのPCMも最初の製品から対応しています。(2018年9月21日)

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